オールライトまた明日

2017年1月31日(火)

新潟ゴールデンピッグス イエローステージ

松尾ミツル「Flag」リリースツアー【旗鼓堂々】初日

 

出演

O.A.:弦と巣箱

清野拓郎

吉井ミキ

小日山敬介

松尾ミツル

DJ:Tomoaki

 

この日、僕は彼と同じステージに立って、ギターを弾いて歌った。

 

松尾ミツルという男は僕の2つ歳下の、いわゆる後輩ってやつだ。

でも彼は僕よりも先にライブハウスのステージで演奏をしていた。

音楽では先輩なんだ。

元々はドラマーだったり、エレキギターを弾きながら歌ったりするバンドマンだったんだって。

だけど、月日が経って、メンバーが県外に行ったりとかして(バンドあるある)彼1人になったんだってさ。

 

それでも彼は音楽が、歌が好きで、アコースティックギターを持った。

彼が1人でライブをやりだした頃を何度か見てるし、共演もしたことがあるけど、彼はあまり上手な方ではなかった気がするよ。(お前が言うな笑)

 

でもある日、久しぶりに共演者として同じステージに立つ機会があって、彼のライブを観た時に、彼は以前僕が思っていたような「あまり上手ではない」彼ではなかった。オリジナルの曲をバンバン書いて、ステージで歌う。

そのどれもが素晴らしかったんだ。

すごく悔しくなったのをよく覚えてる。

 

そんな彼が昨年の11月に初めてのCD「Flag」を作って、そのCDを引っさげてのツアーをすることになった。

そしてその初日を地元新潟で迎えた。

そのイベントで僕も出演者としてライブをしたんだ。

 

彼がCDを出したこと、ツアーを回ること、嬉しいし、すごいと思う。

もちろんそう思う。

 

だけど、だけど、僕は素直に「おめでとう」や「行ってらっしゃい」を言えなかったような気がする。

 

だから僕はライブで、歌で、僕ができる精一杯の思いを込めたよ。

 

恥ずかしい話だけれども、その日はどうしても中島みゆきさんの「ファイト!」が歌いたくて、その日久しぶりに歌ったんだ。

 

ファイト 闘う君の唄を闘わない奴らが笑うだろう

ファイト冷たい水の中を震えながら上って行け

 

この詞を歌いながら彼とのいろんな思い出、そしてこれからの彼の頑張る姿を考えたらなぜか涙が出てきてまともに歌えやしなかったんだ。

本当に恥ずかしいよ。

 

僕のライブが終わって、吉井ミキ、小日山敬介と続き、いよいよ松尾ミツル。

 

この日の彼は本当にぶっちぎってたと思う。自分までバトンを繋いだ前の出演者(僕は別として)が本当に凄まじいライブをしたあとだったし、緊張もすごく伝わってきたけど、それよりもずっとずっと「来てくれてありがとう」「出演してくれてありがとう」そんな気持ちがこもったライブをしたんだよ。

 

勝てねぇなと思った。

もちろん音楽は勝ち負けじゃないのは百も承知だけど、この日ばかりは本当に心の底から「かなわねぇな」と思ったんだ。

 

彼の歌う曲の中に「オールライトまた明日」というものがある。

本当にいい曲だから、ぜひ機会があったら彼のライブを観てやってほしいよ。

 

また少し僕の話をする。

その日、僕の出番が終わって、フロアでタバコを吸って一息ついていたら、松尾ミツルの友達が走って来て「すごくかっこよかったです!」と目をキラキラさせて言ってきたんだ。

そこで色々と話を聞くと、音楽は大好きで、バンドもいつかやってみたいけど、一歩踏み出せないとか、こんなに音楽が好きだけどライブハウスという空間に来るのが初めてだったのだそうだ。

前からずっと行きたかったけど、怖くて行けなかったんだって。

だけど、松尾ミツルの門出だってことで勇気を出して駆けつけたらしい。

そして僕や、共演者、そして松尾ミツルのライブを観て彼は帰り際に

「こんなに素晴らしい空間に今まで来ていなかったのが悔しい、今までの分を取り返すくらいライブに行こうと思いました」って言ってたんだ。

 

その時に僕は本当に幸せな気持ちになったよ。

僕や、松尾ミツルのライブを観て「ライブってすごい」って思ってもらえたんだなって。

 

かなり脱線してしまったけども。

 

彼が自分のツアーの初日に僕を誘ってくれて本当に嬉しかったよ。

これから彼は全国各地に松尾ミツルというアーティストの旗(Flag)を立てに行くそうだ。

なんだか少し遠くに感じたりもするけれど、彼がツアーを全部無事に終わらせて、また新潟に戻って来たときには「帰ってこなくてよかったよ」と言ってやろうと思ってる。